とりいとうか先生「Three Killers at Home」とクロスオーバーさせていただいた小説です。
とりい先生の書いてくださったクロスオーバー小説はこちら
イヅマ、コノノギ、ミヤコの三人は休暇でステイツへと訪れていた。
「なにこの謎メンツ」
コノノギと二人きりでの旅行だと思って浮かれていたイヅマとしてはミヤコの同行はあまり喜ばしくなかった。しかし当のコノノギは真っ黒な瞳を瞬かせ、こてんと小さく首を傾げる。
「言ってなかったか?ミヤコがステイツに用があるというから、まとめてチケットを三人分取ったんだ」
「おかげさまでハイジャックに巻き込まれるわ貨物室から脱走したアナコンダに襲われるわで散々だったけどな」
「まァそれがホラーバースだからしょうがないんじゃない?」
こころなしかカメラの方を見ながらイヅマは目を細めた。
「手前らと一緒にいるとマジでろくな目に遭わねえぜ。早くタゴヤと合流しねえと」
「タゴヤくんはサバイバーだっけ。彼は彼で巻き込まれやすいんじゃないの?」
「あいつの力はポジティブだからお前らといる時ほど酷かねえよ」
ミヤコの恋人であるタゴヤのサバイバーとしての特殊能力は「ポジティブに考えるとその考えた内容に事実をねじ曲げることができる」というものである。例えば彼はミヤコに刃物で襲われた時も「これは多少強引な愛の告白である」とポジティブに考えた。彼の能力のせいでそのまま愛の告白の言葉を(意志とは反対に)言う羽目になったミヤコは今もタゴヤの恋人というポジションに押し込められ……否、収まっている。
「あ?携帯電源つかねえな」
ミヤコは苛立たしげにスマートフォンを何度か叩いた。
「そんな、昭和のテレビじゃないんだから……待って俺のもつかない」
「ふむ、あれじゃないか。ハイジャックのグループをアナコンダが一網打尽にした時、犯人の一人が天井に叩きつけられてスプリンクラーが誤作動しただろう」
「あー……」
そういえば三人ともずぶ濡れになったのである。割とフライト序盤に起こった出来事なのですっかり忘れていた。
「旅行先で携帯使えなくなるって絶対何かのフラグじゃねえか」
ミヤコはうんざりした様子でため息をついた。
ともすれば宿に向かうしかなく、三人はとりあえず空港を出て歩き始めた。
────そして、数分で途方に暮れていた。
携帯電話が無ければ地図を見ることもできず、宿泊するホテルに連絡することもできないと気付いたからだ。
「とりあえず誰かに道を聞こう」
イヅマは通りがかった白衣姿の男性に声をかけた。
「すみません、この辺のマップとかってどこにいけばもらえますか」
白衣の男と、彼と連れ立っていたらしき二人の男も足を止めた。
「地図は空港に行けばもらえますよ」
「観光マップでいいならそこの観光案内所でもタダで置いてるけどォ」
金髪に火傷のある若い男が口を挟む。そして彼は三人の顔を見るとぱっと表情を輝かせた。
「あれっ、アンタたちってもしかして……」
スーツの男と後ろに控えていた赤毛の男も顔を見合せて目を丸くした。
「ジャポンのキラーのみなさんですね」
「────そういう貴方たちはThree Killers at Homeの……」
こころなしか嬉しそうに前に出たのはコノノギだった。
「なに、ノギさん知り合い?」
「好きな小説の実写映画に彼らが出演している」
「まァあれってジャポン版だと俺らじゃないけどな」
金髪の男────フレッドは肩を竦めた。
「ステイツ版を輸入して観たんだ」
「あ〜!……分かんねぇ人はACT50 Three Killers at Homeを見返してねっ」
フレッドはカメラに向かってウインクするとコノノギの方に向き直った。
「あの加工過多────もといプライバシー配慮の激しい映像で我々だとすぐわかるとは、噂には聞き及んでいましたが素晴らしい五感ですね」
「俺は貴方のファンなんだ……あんな風に⬛︎肉を調理できるなんて憧れる」
「おや、それは光栄ですね」
コノノギに握手を求められ、アンソニーはにこやかに応じた。
「……へえ、ファンね」
イヅマが嫉妬を込めて白衣の男、アンソニーを睨む。ヒリつくような殺意を向けられてアンソニーは肩を竦めた。
「……サインがほしい」
赤毛の男、エリアスがぽつりと呟いた言葉にフレッドも同調した。
「そーそー!マジで最近アンタたちの出てる作品見て盛り上がってたんだぜ俺ら!」
「そちらのサインももらっていいですか」
コノノギの一言で、全員がサインを書いて全員と交換するという謎の状況に陥った。
「一枚にまとめてサインしたらなんか映画特典みたいで面白くね?」
「……寄せ書き?」
フレッドとエリアスはひそひそと囁き合いながら順番に一枚の色紙へとサインを書いた。
「イヅマ手前ッ、字が汚ねえんだよ」
「エーッ?そう?サインってこんなもんじゃないの」
ミヤコはイヅマの殴り書きのようなサインを見て顔を顰めた。
「蚯蚓が這ったような字をしやがって」
「ウチの先生のサインも似たようなもんだぜ」
フレッドの茶々に、エリアスは「医者ってみんな字が汚いのかな」と心の中だけで呟いた。
ちょうどサインを交換し終わったところで、黒いジャポン製のリムジンが路肩に停まった。
何かのフラグか?と警戒した全員を他所に運転席から出てきた老女がリムジンの後部座席のドアを開ける。
「ミヤコさん!」
ヘーゼル色の瞳を輝かせ、眩い笑みと共に現れた青年を見てフレッドは顔を引き攣らせ、エリアスは硬直し、アンソニーは笑顔のまま片眉を上げた。そしてミヤコは無理矢理笑顔を作り、青年────タゴヤを出迎えた。
「よお、遅かったじゃねえか」
「────あれってあの作品で一番怖かった人……」
エリアスが小声でフレッドに耳打ちする。
「マァ……あの人はミヤコっていうあのキラーに害を及ぼさなければ何もねえはずだから」
若干怯える二人だったが、タゴヤはミヤコのことしか見えていないようだった。
「お祖父様がステイツに住んでいた時の別邸がありますから、今日はそこに泊まりましょう」
「あー、こいつら乗せてっていい?全員携帯水没させちまったんだよ」
ミヤコがコノノギとイヅマを指差すとタゴヤは笑顔で頷いた。
「勿論です!……そちらの方たちも?」
タゴヤがエリアスたち三人に目を向けると、彼らは同時にぶんぶんと首を横に振った。
「俺らは、……なァ!」
「ただの……通りすがり……」
「害のある者ではございません」
三人の挙動不審さに不思議そうに目を瞬かせるタゴヤを見て、ミヤコが助け舟を出した。
「彼らに道を教えてもらっていたんだ」
「なるほど!優しい方々ですね!」
タゴヤの車に乗って去っていったジャポンのスラッシュ、ゴア、サイコの三人を見送り、ステイツのスラッシュ、ゴア、サイコはほっと安堵の息をついたのだった。
(終)